立ち退きとは怒られるところから始まる仕事です!

 立ち退きとは英語でエバキュエーション(Evacuation)といい、老朽化した建物を建て替えて資産価値を高めるために必要不可欠な業務のひとつです。

 老朽化し、経年変化や自然損耗の激しいマンション・アパートは見た目にも時代遅れで、空室が多くなり、さらに修繕費もかさみます。

 また、滞納問題やクレームも新築物件と比べれば多くなる傾向にあり、社会問題ともなった「孤独死」などのトラブルも発生します。そのため、既存の建物を取り壊し、別の土地活用を考えた時に、立ちふさがる壁が「立ち退き問題」です。

 既存建物の解体は物件が古くなればなるほど、住人も長年住んでいるために高齢入居者の割合が増え、立ち退き後の引越先も限られてきますし、契約をした際に取り交わした「賃貸借契約書の保証人」は他界されていたり連絡が取れなくなるケースが非常に多いのです。本来でしたら任せてある不動産管理会社が2年に1度の更新の際に連帯保証人には確認するべきことだと思いますが残念ながら殆どがなされていない状況です。

 よっていざ立ち退きを考えた時に次の引越し先を探す時に

  1. 高齢になっていることにより身よりもなくなった。
  2. 生活支援受給者だったり、脳梗塞を患っていたりすると新居先の大家から了解が得られない。
  3. 家賃保証の会社を入れないと契約ができない(新家賃の0.5ヶ月~1ヶ月余分に費用が掛かる)
  4. 持病を持っている人も多く掛かりつけの医者に歩ける範囲でないと引っ越さない!
  5. 高齢になるとなかなか現在の住まいから離れたくない方が多く新居先物件が見つかりづらい。

といった問題が発生するケースが増えています。

 よく「契約書の【特約】に“建て替え時には立退き料を請求せずに出て行く”と入れてあるから大丈夫だと思った」というトラブル事例も聞きますが、大家さんに一方的に有利(入居者に不利)な条文は無効となる旨が【借地借家法】に明記されておりますので、契約書どおりに行かないのが現代の立退き事情です。裁判で争っても築年数が45~50年だからとの観点からも判例上は弱者救済の立場から敗訴になるケースがほとんどです。

 過去の立退きの解決例や判例に、似たようなケースがあったとしても、その事案について個々の事情、解決までのプロセスが千差万別で、しかも、感情・人間関係・家族関係などの計算式に出てこない要素も含んでおりますので、参考程度にしかなりません。

 立ち退き業務は、法的にはオーナー様か建築会社、弁護士が代理人となって行うことができますが、権利調整には法律・不動産などの専門知識だけでなく、高いヒューマンスキルが求められます。賃借人と立ち退き交渉をよりスムーズに進めるために経験豊富なコンサルタントに相談する方法もあります。

エバQ先生

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立ち退き交渉、成功の秘訣

エバQ先生の立ち退き講座

 立ち退き交渉の成功の秘訣はたったひとつじゃ! 「まごころ」で交渉すること。 大家さんの事情、借家人の事情、当然それぞれに「言い分」はある。 それをうまくまとめようとするためには、立ち退いてもらう方に誠意をもって、まごごろで対応することじゃ! 信頼できる人間関係ができれば、他の問題は少しずつでも解決してゆける。 もちろん、大家さんが立ち退きにあたって、「借地借家法」などの法律を勉強することはいいことじゃ。しかし、法律を盾にした強引なやり方は、かえって交渉をこじられせることもあるというのは覚えておいてくれ。

 立ち退き成功の基本は「真心と誠意」だとしても、それから先の具体的な交渉には大切な3つの要素が必要じゃ。

立ち退き交渉、成功の三つの要素

 立ち退き交渉を成功させるためには大切な三つの要素がある。その三つをよく考えることが交渉成功の秘訣じゃ!

誰に相談するか

 まず、最初に「立ち退き」を誰に相談し、依頼するかが重要じゃ。
 結論を先に言えば、立ち退き交渉はオーナー (家主)が自分でやるより交渉に慣れた人に間に入ってもらったほうがうまくいく。立ち退き交渉成功の第一歩は、交渉を適任者に任せることじゃ。
 中には人に頼んだ場合の経費がもったいない、自分は交渉事は得意、賃借人とは今まで良好な関係だったなどの理由から、自分で交渉すると言うオーナーもいるが、

「出ていって下さい!」を言った瞬間に
「今までろくに古くなった場所の修理もせず、鍵が壊れても自費で直せと言っただろう」と怒鳴られることが関の山。

 多くの場合、うまくいかずに、最終的に専門家に頼むことにとなると入居者を怒らせた後なので話がこじれてウマく進みまない。ましてや家賃の支払いが遅れている入居者となれば話はもっと複雑になる。

 立ち退き交渉というのは、もちろん、個々のケースにもよるが、そう簡単なものではないことをよく理解してほしいのじゃ。

 また、オーナーが交渉した場合、オーナーが最終決定権者なので、口にした言葉が全て決定事項になる(言質を取られる)という危険性もある。それまで良好な関係だった賃借人との関係も、「立ち退き」という「利害対立」の状況では、今までのようにはいかないことを、よくよく肝に銘じてくれ。

さて、そこで誰に頼むかという問題になるが、次のような選択肢が考えられる。

  1. 弁護士に依頼
  2. コンサルタント会社に依頼
  3. 不動産仲介業者に依頼
  4. 建設会社・ハウスメーカーに依頼
  5. ADR(裁判外紛争解決手続調停人)に依頼

 “依頼する”と書いたが、【法的】に「立ち退き交渉」は、オーナー本人か弁護士しかできない。
 したがって、2~4に依頼する場合は“相談”という形になる。

  1. 弁護士に依頼 → オーナー以外で直接交渉できるのは弁護士だが、弁護士にもそれぞれ【得意分野】がある。おつきあいがある弁護士さんでも、立ち退き交渉が得意かどうかはわからないだろう。立ち退き交渉というのはただ、杓子定規に法律を振りかざして成功するものでも無い。弁護士さんに頼む場合は「立ち退きに熟達した」弁護士さんを探すことが重要じゃ。

  2. コンサルタント会社に依頼 → コンサルタントに依頼する場合は「相談」ということになる。しかし、「立ち退き専門」というだけあって、多くの事例を処理しており、また、立ち退きに熟達した弁護士も紹介してもらえるので、交渉成功の近道といえるかもしれない。

  3. 不動産賃貸業者に依頼 → 現在利用中の不動産管理会社に相談しても、本来は入居者を募集することが主な仕事なので、立ち退き交渉には慣れている人は少ないかもしれない。

  4. 建設会社・ハウスメーカーに依頼 → こちらも専門分野が異なるので、立ち退き交渉になれている人は少ないだろう。

  5. ADR(裁判外紛争解決手続調停人)に依頼 → 「ADR」とは「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の頭文字をとって名付けられた「紛争解決手続」で、日本語では、代替的紛争解決手続とか、裁判外紛争解決手続と訳される。
     ADRの種類にはあっせん、調停、仲裁があり、いずれも当事者同士での交渉で解決を目指す制度だ。しかし、「あっせん人」や「調停人」、「仲裁人」が示した解決案を拒否することができるので、交渉が成立しないこともある。
     そもそもADRの手続きは、紛争の一方当事者の申立てにより始まるが、相手方がADRを望まない場合には、ADRそのものが不成立となる。

お金

どのくらい予算が必要か

 立ち退きには当然のごとく、お金がかかる。しかし、初めから予算を少なく考えていると、あとで、交渉が長引く原因となることが多い。

 まず、「立ち退き交渉」に必要なお金は、「入居者に支払う費用(預り敷金含む)」と「交渉に関する実費」だ。

 前者は入居者に移転をお願いする「協力料」と考えればわかりやすい。後者はなるべく経費を削減したいところだが、立ち退き交渉は大変労力も時間もかかる仕事なので、値踏みしないほうがよい。交渉が一カ月早く成功すれば建築も早まるので早期解決を優先したほうが結果的には得策じゃ。

 「入居者に払う費用」の内訳

  1. 引越し代、敷金・礼金などの支払い費用、賃料が増加した場合の差額などの移転費用の補償。
  2. 入居者が失う利益として考えられる居住権、営業権などの補償。これは移転によって広さや交通の便などの面で不自由を被った場合の補償や商家の場合はこれまでと同一営業のための設備補償や休業補償、減収補償などが挙げられる。
  3. 消滅する借家権の補償(公的な収用や相続税評価の際に借家権という概念があるため)。

 特に老朽化した集合住宅の1階で店舗を開業されている場合は営業権(固定客を奪うことにもなりかねない)、設備費用など非常に判断がつけづらいものじゃ。

 「交渉に係る実費」 の注意点

  1. 予算は多めに見ること。経費を削減したいのはやまやまだが、予算を少なく見てしまい後であわてるケースが多い。立ち退き交渉の特殊性から交渉に係る実費は初めから多めに見ておけば、少なくなる分には余剰資金となるし、堅実な事業収支計画を立てることもできる。
  2. 立ち退きは相手があることなので「絶対にうまくいく保証」はない。依頼者に一度任せたらしばらくは悠然と構える余裕を持つほうが精神衛生上もよいだろう。
  3. 立ち退き料に相場はないが予算組みは必要だ。バブル以降は立ち退き料の相場も下がってきたが、最近また不動産価格の上昇などにより交渉が難しくなることも予想される。

 立ち退き料の相場と予算組み

 建築費や諸経費と賃料収入のバランスを考えたとき、立ち退き料の目安が必要となる。以下のことを念頭に予算組みを検討しよう。

※賃貸人と賃借人のあいだで「賃貸借契約書」を取り交わしていないで現在に至る場合は別途相談となります。

【立ち退きに関わる賃借人の支払い概算一覧】

  1. 預かり敷金の返金
  2. 立ち退き当月の日割り家賃の返金
  3. 更新料金の返金(2年に一度賃借人が不動産管理会社との間で結んでいてその後1年以内の立ち退きであれば賃料の0.5ヶ月分は返金するのが懸命)
  4. 新居先の敷金(立ち退きに対する詫び料)
  5. 新居先の礼金(基本的には無い物件を紹介します)
  6. 新居先の不動産仲介手数料
  7. 新居先への引越し代(長く入居されている単身者は概ね家賃の2ヶ月分)
  8. 家賃保証料(新居先での家賃未払いの保険料)
  9. 鍵の交換料(15,000円~20,000円)
  10. AC・洗濯機の取り外し、取り付け料(25,000円~35,000円))
  11. ガスコンロ代(新居先がLPガスから都市ガス、都市ガスからLPガス)
  12. その他

引越先

引越先探しも大変じゃ

 退去を了解してもらっても、一安心とはいかない。

 入居者の引越し先が決まらなければ、その転居先を探すお手伝いをしなければならない。立ち退き交渉の相手は高齢の方も多く、次の引越先を探すのが難しい場合も多い。しかし、転居先が見つからないとなれば、入居者はいつまでたっても立ち退いてくれないだろう。転居先は、入居者の事情や好みもあるので、信頼のおけるコンサルタントや不動産会社に依頼することをおすすめする。

 ましてや高齢者になった現在「脳梗塞にでもなっていたら」引っ越しを荷造りを手伝ってくれる業者に依頼するしかない(引越し費用が2~3倍余分に掛かる)。

 また立ち退きを春先までと決めてしまうと引っ越し代金が2倍ぐらいに膨れ上がる!。今年の春先も引っ越しできない難民がマスコミや政府でも問題になった厄介な時期じゃ。

 ただし、高齢者のみを受け入れてくれる賃貸住宅は現在非常に少なくなって、あきらめて公営住宅へ転居する(募集期間がある場合が多い)、または、高齢者向け住宅(非常に少ない)への入居など、通常の不動産会社では対応できないことも多い。それに対して、経験豊富な立ち退き専門のコンサルタント会社では、そうしたさまざまな事情を持つ入居者の相談にものってもらえる場合がある。

立ち退きの入居者退去(引越し)のポイント

  1. 入居者一人ひとりの状況に基づいた立ち退き戦略の立案
  2. 入居者の転居先斡旋(仲介業務代行)
  3. 引っ越しのお手伝い(引っ越し会社の金額交渉など)

入居者の反応それぞれ

  • すぐに了解し「せめて引越し代ぐらいはお願いします」という入居者
    ※因みに引越し代をだせ!と言って引越し会社への費用だけを考えている大家の多いことには困ったものじゃ。たやすく納得してはだめじゃ!。だいたいこの言葉でトラブルが多く少額裁判に持ち込まれるケースも非常に多い。
  • 自分で引越し先を決めて、退去の際に「お世話になりました」と菓子折を持ってきてくれる入居者
  • 「旦那がここで死んだから、私も死ぬまでここにいる」と、テコでも動かないご高齢者
  • 「引越しには協力するけれども、同じ賃料で同じ広さの物件を見つけてきてほしい」という人

 立ち退き交渉がうまくいかず、何がなんでも出ていかない、たった1人の入居者が残り、何年も建替えることができないという事例もある。入居者は権利を失わないために、家賃を払い続ける(供託等)が、1戸分の家賃では、固定資産税を初めとする不動産の維持管理費用はまかなえない。

 交渉に失敗すれば、大切な資産が不良資産に変わってしまうということをよくよく肝に命じてくれ。

立ち退き交渉、成功後の資産運用

 さあ、立ち退き交渉は大変だったが、なんとか成功した。跡地をどうするか? 土地さえ更地になれば、なんとかなるだろうと考えている大家さんも意外と多い。しかし、重要なのは立ち退き交渉を始める前に、交渉成功後の目的を明確にしておくことじゃ。立ち退き成功後の土地活用を具体的に明確にしているかどうかも、立ち退き交渉の成否に関係する。「事業化」「売却処分」「税金対策」「子供との同居」「優良入居者の再入居」などと目的を明確にしておくことで方針が立てやすくなることは覚えておいてくれ。

新築

新しいマンションを建築

 更地に新しいマンションやアパートを建築するすることも選択肢のひとつじゃ。しかし、良く考えなければならないのが、人口減少、少子化の世の中になった今、新築から5~10年なら、住まう方はすぐに探せるかもしれない。ところが古くなったら空き住戸も増えるし家賃を下げないと入居者が集まらないことも考えておく必要がある。

駐車場

最近増えているのがコインパーキング

 更地に最近増えているのが、時間制駐車場、いわゆる「コインパーキング」じゃ。しかし、最近の若者の自動車離れや、都市部での月額駐車場の高さから、自動車保有台数自体が減ってきている。それを逆手に取ったシェアカーなどの新事業も出て来てはいるが、最近は「過当競争」の感は否めない。

貸し倉庫

今、注目の新事業!

 新築の別事業だが、今、注目されているのが、貸し倉庫業じゃ!